園長からの手紙 その②
【母の背中を手本に生きる】
文房具類を万引きして捕まった子どもに、父親がいったそうです。
「馬鹿だなぁ。このぐらいのものなら、いくらでもパパが会社から持って帰ってやったのに」
子どもは、親や教師のいう通りにはなりませんが、親や教師のするとおりになります。ですから、子どもには、周囲によい手本がなければならないのです。
「なってほしい子どもの姿」を、親も教師も自ら示す努力をしなければならないということでしょう。
私の母は、高等小学校しか出ていない人でした。
父と結婚後、田舎から都会へ出てきて、父の昇進とともに、妻としてのふさわしい教養を身につけたのだと思います。
その母が「あなたたちも努力しなさい」といった時、自ら手本になっていた母の姿に、私たち子どもは返す言葉がなく、ただ従っていたのでした。
母はよく諺を使って、物事のあるべきようを教えてくれました。
その一つに、「堪忍のなる堪忍は誰もする。ならぬ堪忍、するが堪忍」というのがありました。
母は本当に我慢強い人でした。
私などにはわからない苦労を、黙って耐えていたのでしょう。
誰にでもできる我慢は、我慢のうちに入らない。
ふつうなら到底できない我慢、忍耐、許しができて、初めて「堪忍」の名に値するのだという教えでした。
この教えは、私の八十五年の生涯を何度も支えてくれました。
ある会議の席上で、きわめて不当な個人攻撃を受けたことがありました。
会議終了後、何人かが「シスター、よく笑顔で我慢したね」といってくれたのですが、母のおかげです。
私は亡き母に、「よいお手本をありがとうございました」と心の中でつぶやいていました。
「置かれた場所で咲きなさい」渡辺和子著より引用
いかがでしたか。
子どもは親や教師の「いう通り」にはならないが
「するとおりになる」です
「親が誠実に努力して姿を見せる」言葉を伝えることよりも、親が誠実に努力する姿を見せることが何よりも大切であると思います。
ぜひこの時にこそ努力を重ねて、良き姿勢を作って下さいね。